矢野達司

社外取締役 指名委員

1974年 4 月 株式会社トーメン入社
2003年 6 月 同社執行役員北米総支配人
2006年 4 月 三洋化成工業株式会社理事(転籍)
2006年 6 月 同社取締役兼執行役員
2010年 6 月 同社取締役兼常務執行役員
2012年 6 月 同社取締役兼専務執行役員
2016年 6 月 同社顧問
2018年 6 月 同社退職
2019年 6 月 当社社外取締役(現任)
2019年11月 マニー株式会社社外取締役
(2026年6月時点)

既存事業の反転、収益性向上に正面から向き合う

第4次中期経営計画の初年度は、利益面で厳しい結果となりました。既存の紙事業は、欧州地域をはじめ、3事業地域統括会社とも、需要の減退・市況の影響により減益となりました。一方、M&Aによる新たな収益基盤の獲得は、既存事業の落ち込みを補う上で一定の効果を発揮しており、事業ポートフォリオの変革は着実に進んでいます。ただし、その成果が数字として十分に表れているとは言えません。見え始めた収益構造の変化を、定量的な成果として示していくことが2年目、3年目の重要な課題になります。

収益性に課題があるものの、利益の多くは既存の紙事業から生み出されています。ここを反転させ、収益性を向上させないと全体の収益性を高めることは難しいでしょう。私も石油化学業界で同様の構造改革に直面した経験がありますが、既存事業を反転させるには、従来の仕組みを見直し、新しい事業モデルへと作り替えることが必要です。営業利益200億円という目標を実現するためには、M&Aというインオーガニック成長のみに頼らず、オーガニック成長、すなわち、既存事業の収益性の向上に正面から取り組むことが不可欠です。

私が社外取締役に就任した2019年から、当社は海外事業の拡大へと大きく舵を切りました。それに伴いリスク管理とPMIの重要性は一段と高まっています。私はこれまで海外事業に長く関わる中で、成功事例だけでなく、表に出ない失敗事例も数多く見てきました。当社の持株会社体制のもとでは、事業地域統括会社を通じて多くの子会社を統率・監督する必要があります。失敗や不祥事は目の届きにくいところで起こります。常に誰かが見ている体制をつくり、買収した会社を良い方向へ変えていく、そうした点について、経験を踏まえて問題点を見つけ、助言することが私の役割の一つだと考えています。2024年からスパイサーズのマーティンCEO、アンタリスのポンサンCEOの両名が取締役に選任され、取締役会での議論がより多角化し、深化しました。取締役会への提案や報告内容を見ても、IT、サステナビリティ、調達、販売などの分野で3事業地域統括会社との連携が充実し、買収後のPMIの現場においても担当社員のグローバルコミュニケーション能力が飛躍的に向上していることがうかがえます。持株会社体制への移行を契機に、グループ経営を推進してきたことがこうした改善につながっていると評価しています。

伊藤三奈

社外取締役 報酬委員

1996年 6 月 ベーカー&マッケンジー法律事務所入所
2004年 1 月 同事務所パートナー
2020年 1 月 同事務所特別顧問
2020年 5 月 ZENMONDO株式会社設立 代表取締役(現任)
2020年 6 月 株式会社シーボン社外監査役
2021年 6 月 当社社外取締役 監査等委員
2022年 6 月 当社社外取締役(現任)
2024年 4 月 ダイドーグループホールディングス株式会社 社外取締役(現任)
2024年 5 月 Mina Arai-Ito外国法事務弁護士事務所設立 所長(現任)
2025年 3 月 株式会社ノーリツ社外取締役 監査等委員(現任)
(2026年6月時点)

攻めの成長を支える、強固なリスクマネジメントを

事業の収益力強化や資本効率の向上など、投資家目線に立った経営へと重心が移ってきている点を評価しています。PBRの改善は、短期的な株価向上施策によるものではなく、中長期的な企業価値向上の結果として実現されるものです。取締役会では投資案件を事業としての魅力だけでなく、ROICなど資本効率の改善や株主価値への影響も含めて一体的に議論する機運が生まれています。執行側からの報告も多面的になってきており、我々社外取締役が提起した意見に対して次の取締役会で迅速にレスポンスが示される場面も多く、執行と監督の間に健全な緊張感と実効性が生まれています。

成長投資を企業価値向上へとつなげるためには、リスクを適切に見極め、管理する仕組みが不可欠です。私は国際弁護士としてクロスボーダー取引や海外事業におけるリスクに長く向き合ってきました。その経験からも、グローバルに事業を展開する企業にとってリスク管理とガバナンスの高度化は今後さらに重要になると実感しています。当社の強みは世界各地域に事業基盤を持ち、多様な商材や顧客・サプライヤーのネットワークを構築していることで、それは事業リスクの分散にもつながっています。買収によりグループに参画した会社の独自の強みを尊重しつつも、リスクマネジメント上外せない部分については、グループとして一本筋を通すことが肝要です。ガバナンスを経営基盤そのものと捉え、グループ全体、特に海外を含めたリスクの可視化と継続的なモニタリングを進めていく必要があります。当社のガバナンスは着実に高度化していますが、完成形はありません。


6月まで指名委員を務めた立場から、長期経営ビジョン「GIFT 2030」の実現には、経営戦略と人材戦略の連動が不可欠であると考えています。誰を採用し、誰が経営の要職を担うのかは、経営戦略と密接に結びついているべきです。特に当社のようなグローバル企業では単なる専門性だけでは不十分で、多様な文化や価値観を理解し、経営環境の変化が一段と速まる中でリーダーシップを発揮できる人材が必要です。将来の経営を担う人材の育成・登用については、グローバル化のスピードが上がり始めた今、国内外に幅広い人材プールを構築し、計画的に育成していく仕組みが鍵になると考えています。

片岡祥子

社外取締役 監査等委員 指名委員

1998年 4 月 弁護士登録
2001年10月 松下電器産業株式会社(現パナソニックホールディングス株式会社)法務本部
2007年11月 株式会社ファーストリテイリング法務部リーダー
2012年11月 株式会社(現合同会社)ユー・エス・ジェイ法務部長
2018年 1 月 株式会社コーチ・エィ法務・内部統制マネージャー
2019年12月 株式会社ディ・アイ・システム社外取締役 
2020年 3 月 株式会社コーチ・エィ取締役 監査等委員(現任)
2021年 8 月 プライムロード株式会社社外監査役(現任)
2022年 6 月 当社社外取締役 監査等委員(現任)
2023年12月 株式会社ディ・アイ・システム社外取締役 監査等委員(現任)
(2026年6月時点)

監査と指名をつなぎサクセッションの実効性を高める

第4次中期経営計画の達成に向け、報酬委員会メンバーとして業績連動型株式報酬の見直しを進めました。役員報酬の制度設計は、会社がどのような価値創造を重視しているのかを社内外に示すメッセージでもあります。本中計では役員報酬における非財務指標の比重を高めるとともに、GHG排出量削減や従業員エンゲージメントといった測定可能なKPIを明示しました。さらに市場評価を反映する相対TSRも加えることで、中長期的な企業価値向上を意識した制度へブラッシュアップしました。

2026年からは指名委員会のメンバーに就任しました。かねてより監査等委員である社外取締役が指名委員会に参画することの意義を提言してきたこともあり、私自身がその役割を担うこととなったものです。監査等委員会は常勤監査等委員を通じて独自の情報を得ることができ、また定期的な開催を通じて経営状況を継続的に把握しています。こうしたモニタリングを通じて得られる知見を候補者評価や後継者計画の議論に反映することで、指名機能の実効性向上を目指します。今後は、透明性のあるサクセッションプロセスの整備が重要なテーマになると考えています。

取締役会ではグローバルな投資案件が多数取り上げられ、活発な議論が行われています。M&Aの検討にあたっては、投下資本収益性や資本効率を意識したいくつかの明確な数値基準を設け、それに基づいて個々のケースを評価しています。多数の投資案件に取り組む上では一定の判断基準を持つことが不可欠ですが、その数値基準を絶対視しないこともまた重要です。取締役会では数値基準を踏まえつつも、案件ごとの戦略的意義や将来性についてオープンに議論し、必要に応じて柔軟な判断ができている点が強みであると思います。

紙業界は構造的な変化の中にあり、今後全てのプレーヤーが長期的に生き残れるわけではありません。誰が変化を先取りし、再編の動きを成長機会へと転換できるのかが問われています。この変革期において、当社は積極果敢にグローバルなM&Aに取り組んでおり、それに伴う難易度の高いPMIやリスクにも向き合っています。長年企業法務の現場であらゆるトラブルに対処してきた経験やリスクに対する嗅覚を生かし、社外取締役として貢献したいと思います。

工藤陽子

社外取締役 監査等委員 報酬委員

1982年 4 月 大成火災海上保険株式会社(現損害保険ジャパン株式会社)入社
1993年 9 月 プライスウォーターハウス(現プライスウォーターハウスクーパース)入所
1996年 1 月 カリフォルニア州公認会計士登録
1996年12月 アーンスト・アンド・ヤング入所
2005年 4 月 新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)出向
2006年 1 月 同法人転籍
2006年 5 月 同法人特定社員(プリンシパル)
2012年 7 月 同法人特定社員(シニアプリンシパル)
2020年 7 月 同法人品質管理本部非監査契約審査部長
2022年 6 月 ソフトバンク株式会社社外監査役(現任)
       中部電力株式会社社外取締役
2023年 6 月 公益財団法人日本オリンピック委員会監事(現任)
       公益財団法人東京 2025世界陸上財団監事(現任)
2025年 4 月 一般財団法人ASICS Foundation監事 (現任)
2025年 6 月 公益財団法人日本バレーボール協会 理事(現任)
       当社社外取締役 監査等委員(現任)
2026年 3 月 NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
       社外取締役監査等委員(現任)
(2026年6月時点)

投資の成果を厳しく検証し、資本効率の向上を促す

第4次中期経営計画においてグローバルネットワークの強化や、事業ポートフォリオの最適化を進める方向性は適切と評価しています。一方で、当社の成長ステージは次の段階へと進みつつあります。M&Aを通じて事業規模を拡大してきた当社が今後問われるのは、構築した基盤から、いかに安定的な利益とキャッシュフローを生み出すかです。企業価値向上は、稼ぐ力と資本効率の向上によって実現されるものであり、買収後のPMIを通じたシナジーの実現が現中計の成否を左右すると考えています。

私は財務・会計分野における専門的知見を踏まえ、投資が実際に企業価値の向上につながっているかを特に注視しています。M&Aに限らず、人材やDXへの投資についても、各施策が資本コストを上回る価値を継続的に創出しているか、定性・定量の両面から確認しています。社外取締役の役割は、経営陣とは異なる視点から企業価値向上に向けた論点を提示し、経営判断を客観的に検証することで、取締役会の議論の質を高めることにあります。この観点から、私は買収の実行をもって投資を完了とするのではなく、買収先における企業価値の創出までを取締役会が継続的にモニタリングすべきであると指摘してきました。その結果、PMIの進捗やシナジー実現状況を定期的に確認する視点が、取締役会においてこれまで以上に共有されるようになってきたと感じています。今後は、投資判断時の妥当性に加え、投資後の成果をより厳格に検証することが重要です。当初の投資計画と実績の差異、その要因、シナジーの実現状況を継続的に確認し、必要に応じて軌道修正や経営資源の再配分につなげる議論をさらに深めていく必要があります。

PBRの改善は、それ自体が経営の目的ではなく、継続的な企業価値向上の結果として実現されるものです。そのため、取締役会では、限られた経営資源をどこに配分すべきか、また期待した収益を生み出していない事業をどのように見直すのかという、本質的な議論が重要になります。

当社のグローバルネットワークは大きな強みです。この強みをさらに生かすには、各地域・各社の強みや顧客基盤を相互に活用する一方、重複する組織や管理機能を効率化し、グループ全体で経営資源を最適に配分する必要があります。PMIを着実に実行し、シナジーの創出と収益構造の改善を進めることで、より収益性と資本効率の高いグループ企業へ進化していくことを期待しています。