温室効果ガス濃度上昇にともなう気候変動により、平均気温や海水面の上昇、そしてこれによる自然環境への影響まで様々な変化が生じています。市場においても、SDGsの国連決議を背景にプラスチック・フリーの潮流が世界中に広がっており、環境負荷低減の動きが加速しています。これら気候変動による事業への影響を当社は重要な問題と認識し、2022年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明しました。今後、気候変動が与える事業へのリスク・機会を分析して経営戦略に反映し、自然環境との共生、調和を図り、社会・経済の持続可能な発展の実現に取り組んでまいります。

当社は、気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しています。当社の取締役会は、気候関連課題に対する最終責任を負っており、気候変動対応を含むサステナビリティに関する事項についてESG委員会より報告を受け、進捗状況を監督し、「総合循環型ビジネスモデル」の展開を図っています。
ESG委員会の委員長には、代表取締役会長兼CEOが就任しています。ESG委員会は、環境管理委員会等より気候関連課題に関する報告を受け、GHG排出量削減やリスクマネジメントなどの課題への取り組みについて、助言・指導してまいります。
気候変動によるリスクや機会には、脱炭素社会に向けた規制強化や低炭素技術の革新、気候変動対応への市場の変化や、気候変動によって生じる災害等が想定されます。当社では、事業影響、財務影響を与える気候関連リスク・機会の特定にあたり、IEA※の気候変動シナリオを参考に、脱炭素社会に向けた2℃シナリオと化石燃料に依存した4℃シナリオの状況を考慮し、当社に影響を与える可能性のある様々なリスクと機会の要因を抽出・整理しました。主なものは、以下の通りです。
※IEA: International Energy Agency(国際エネルギー機関)
【想定シナリオと事業に影響を与える可能性のある主な気候関連リスク・機会の要因】
|
2℃シナリオ: |
4℃シナリオ: |
|
脱炭素社会に向けたシナリオ |
化石燃料に依存した成り行きのシナリオ |
||
移行 リスク |
規制 |
•カーボンプライシング等のGHG排出規制強化 |
― |
市場 |
•環境認証製品の需要増加 |
― |
|
評判 |
•気候変動問題に対する取組評価の厳格化、 情報開示要請の高まり |
― |
|
技術 |
•競合する再生エネルギー価格の低下 (太陽光、風力等) •草本系バイオマス燃料の需要増加に伴う 木質系からの需要の移行 |
― |
|
物理的 リスク |
急性 |
― |
・水害(台風・豪雨)の頻発化・激甚化 ・水質悪化(取水河川等の濁度上昇) |
慢性 |
― |
・生態系の変化、病害虫の異常発生 |
|
移行・機会 |
製品・ サービス |
・非化石エネルギー利用拡大 |
― |
抽出・整理した要因について、「事業・財務への影響度」、「リスク発現・機会実現までの期間」、「発現・実現の可能性」の観点で評価を行い、当社として重要なリスク・機会、およびそれらに対する今後の対応策・機会獲得のための施策を整理しました。
【移行リスク/物理的リスク】
重要なリスク |
事業影響 |
期間 |
対応策 |
||
移行 リスク |
規制 |
カーボンプライシング等の GHG排出量規制強化 |
・操業への炭素税の導入 ・調達品への炭素税等の導入またはGHG削減対応による操業、調達コスト増加 |
中期 |
・再生エネルギーの積極的な活用と省エネの徹底/強化 ・積極的な環境負荷低減製品の選定、地球環境に配慮したグリーン購入の促進 |
物流センター/事業所、配送車両への炭素税等の導入による輸送、保管コスト増加 |
中期 |
・他社との共同配送、配送効率の向上 ・物流センター、事業所内の事業の効率化 |
|||
物理的 リスク |
急性 |
激甚災害の増加 (台風・豪雨の頻発) |
・自社施設/設備の毀損による復旧コスト増加 ・自社操業停止による調達量、売上減少 |
中期 ~ 長期 |
・高リスク拠点の防災対策推進 ・拠点間の連携体制の強化 ・BCPの見直し/強化 |
・仕入先の被災/操業停止による調達コスト増加 ・サプライチェーン寸断による調達量、売上減少 |
短期 ~ 中期 |
サプライチェーン強化等による事業のレジリエンス向上 |
|||
慢性 |
降水・気象パターンの変化 や平均気温上昇 |
水需給の変化による製紙会社の操業停止に伴う調達量減少、水使用料、調達価格の上昇 |
中期 |
【機会】
機会 |
事業影響 |
期間 |
機会獲得のための施策 |
||
移行・機会 |
製品・ サービス |
エコ包装の普及 |
包装材の化石燃料素材から紙素材への変更による売上拡大 |
中期 |
市場特性に合わせたパッケージング事業の拡大 |
消費者嗜好の変化、 国内外法規制の変化 |
循環資源への切替(例:紙製容器導入)による売上拡大 |
中期 |
環境配慮型素材や製品の開発、流通 |
||
循環型社会の形成 |
各種回収サービス(ecomo)を通じたビジネス機会の増加による売上拡大 |
長期 |
製品販売と古紙回収による循環型事業モデルの確立 |
||
非化石エネルギー利用拡大 |
バイオマス発電用木材、運転支援システムの需要増による売上拡大 |
中期 |
バイオマス発電所運転支援システムの展開 |
■リスク発現・機会実現までの期間 短期:3年以内、中期:3年超10年以内、長期:10年超 |
(分析結果を踏まえた今後の取組)
シナリオ分析を行った結果、移行リスクでは仕入先のパルプメーカーや製紙会社の炭素税、GHG削減対応の負担は小さくなく、仕入価格への転嫁も想定されることから、調達コスト増の可能性があると考えています。そのため、今後当社としても、当該影響の小さい環境負荷低減製品の選定を積極的に検討することが必要であると考えています。
また、物理的リスクでは、台風・豪雨といった激甚災害が増加すると、自社の施設のみならず、サプライチェーンである取引先の被災や操業停止が考えられ、商品供給に支障が生じる場合、事業・財務に大きな影響を及ぼす可能性があり、幅広い仕入ソースを引き続き確保してまいります。
機会としては、エコ包装の普及により包装材としての紙素材の需要が増加しており、今後ともパッケージング事業をはじめ、事業領域の拡大を図ります。
また、非化石エネルギー利用拡大や循環型社会の形成を見越し、バイオマス発電所運転支援システム「BMecomo」の開発や提供、古紙回収ソリューション「ecomo」を通じた循環型事業モデルの構築を目指す等、ビジネス機会の獲得にむけた対策を積極的に進めます。
「KPPグループサステナビリティ基本方針」に基づき、事業にとっての重要度と社会にとっての重要度からマテリアリティを評価しており、気候変動対策をKPPグループのマテリアリティの一つとして特定しています。


また、気候関連リスク・機会を評価するプロセスとして、事業への影響度や発生可能性、事業戦略との関連性、ステークホルダーの関心度等を勘案し、重要度を評価しています。気候関連リスクの管理プロセスについては、環境管理委員会によって評価された重要度の高いリスクはリスク管理委員会に報告され、全社的なリスク管理体制として、「リスク管理規程」に基づき、経営に対して特に重大な影響を及ぼすと判断されたリスクについて、対策委員会の設置等の対応をすることで管理してまいります。
【温室効果ガス(GHG)排出量に関する目標】
当社は持続可能な社会の実現に向けて、総合循環型ビジネスモデルを展開しています。気候変動の緩和に向けて、自社の事業活動による温室効果ガス排出量削減目標を、来年度を目途に設定し、再生可能エネルギーの積極的な活用と省エネの徹底や強化に取り組んでまいります。また、目標設定の範囲は、まずスコープ1、及びスコープ2を対象にし、将来的にはスコープ3にも拡大を検討すると共に海外拠点をこの範囲に収め、グローバルでの目標を設定し、バリューチェーン全体での排出量の削減に取り組んでまいります。
環境データ |
2021年度 |
2020年度 |
2019年度 |
2018年度 |
2017年度 |
事業者のCO2排出量(t-CO2) |
1,797 |
1,854 |
2,001 |
2,247 |
2,355 |
トンキロ法によるCO2排出量 |
9,115 |
9,635 |
10,476 |
11,593 |
11,572 |
(集計範囲:国内単体 グループ全体での集計は対応中)
【気候変動の緩和に貢献する製品・サービスの売上高に関する指標】
当社は、サステナビリティ戦略の達成に向けた進捗の管理指標として、気候変動の緩和に貢献する製品・サービスである環境対応紙や森林認証パルプの売上高や販売量も活用しています。また、当社が定義する「グリーンプロダクト」や「グリーンソリューション」においても気候変動の緩和に貢献する製品・サービスとして、売上高や販売量を指標として、規模の拡大を目指してまいります。
環境データ |
2021年度 |
2020年度 |
2019年度 |
2018年度 |
2017年度 |
環境対応紙の販売(トン) |
683,582 |
736,562 |
772,484 |
695,032 |
566,503 |
森林認証パルプの販売(トン) |
172,561 |
157,467 |
149,308 |
152,251 |
128,428 |
(集計範囲:国内単体 グループ全体での集計は対応中)
