国際紙パルプ商事株式会社(本社:東京都中央区、社長:田辺 円、以下:当社)は、株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)、株式会社東宏(本社:札幌市東区、社長:小林雅彦)と3社共同で、山岳トンネルの防水シート張り付け作業を効率化し、高品質な施工を実現する「壁面形状追随型長尺防水シート自動展張システム」(以下、本システム)を開発しました。

写真1 模擬トンネル 防水シート張り付け試験状況
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写真1 模擬トンネル 防水シート張り付け試験状況

今後予測される人口減少や少子高齢化に伴って、山岳トンネル技術者や熟練作業員などの技能労働者が不足するという建設業界全体の課題に対応するためには、より一層の生産性向上を実現する自動化技術の開発と普及が求められています。

 

当社は紙の商社として自社が保有するリソースを活かし、建設業界の防水シートの製作にかかわることで、業界の枠を越えた新たな価値創出を目指しています。当社は、大林組の進める山岳トンネル自動化システム(※1)の開発に参画し、社会インフラ構築をサポートします。

(※1)山岳トンネル工事全体を自動化することで生産性向上を図るもので、国土交通省が推進しているi-Constructionの山岳トンネル工事における具体化技術として実用化をめざしています。

 

 

◇システムの詳細

山岳トンネル工事では、トンネル完成後における周辺地下水の円滑な排水や覆工面への漏水防止、覆工と地山の縁切り(アイソレーション効果(※2))によるひび割れ抑制などを目的として、覆工打設前の吹付けコンクリート面(以下、壁面)に防水シートを張り付けます。


従来の防水シート張り付け作業では、作業台車最上段から壁面に沿わせて下に垂らしたロール状の防水シート(汎用品で幅約2.2m)を、1枚ずつ人力で壁面に広げながら押し付けて釘打ち機で固定し、トンネルの全周にわたり隣り合う防水シートと溶着していました。溶着は、十分な止水性と均一な接合強度が求められる重要な作業ですが、例えばトンネル奥行き方向10m程度の施工では5回の全周溶着が必要になり、多くの労力がかかっていました。また、防水シートを壁面の凹凸に対して余裕のない状態で固定すると、覆工コンクリート打設時に突っ張った状態になり、天端部での空隙の発生や防水シートの破損が懸念されることから、凹凸に追随できる適度な余裕を形成して固定する高度な熟練技能が必要でした。
 


今回開発した本システムでは、幅10.5mの長尺シートを採用することに加えて、防水シート展張時に必要とされる適度な余裕を特殊な装置で確保することができます。山岳トンネルの防水シート張り付け作業を迅速化・省人化するとともに、施工品質も確保します。当社は、長尺防水シートの製作を担当するとともに、大林組・東宏と共同でシートに改良を加えたことで、新たな防水シート自動展張装置の仕組みを可能にしました。

 

模擬トンネル(延長約20m、断面積約70m²)にて本システムを適用した結果、作業性および要求品質が確保されていることを確認しました。


今後、このシステムは大林組の施工する山岳トンネル工事に本格的に導入される運びです。当社としてもこれから大林組が進めるインフラ整備にむけた取り組みを積極的にサポートし、安全で安心な環境づくりと持続可能な社会の構築に貢献してまいります。

 

(※2) アイソレーション効果
覆工コンクリートと吹付けコンクリート面(壁面)に防水シートなどを挟み、互いを付着させず縁切りすることでひび割れ発生を防止する効果。コンクリートは硬化する過程でセメントの化学反応による熱を発生し、熱膨張するため、硬化が進んで温度が低下した時に、覆工コンクリートが吹付け壁面に付着し拘束されていると、トンネル内部側だけが収縮しバランスの悪い収縮となりひび割れ発生の原因となる

 

写真2 蛇腹折りしたロール状防水シート(台車下部)
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写真2 蛇腹折りしたロール状防水シート(台車下部)
図1 壁面形状追随型長尺防水シート自動展張システム
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図1 壁面形状追随型長尺防水シート自動展張システム

<本件に関するお問い合わせ>

経営企画部 IR・広報課 TEL:03-3542-4169