秋の深まりを感じさせる10月。岐阜県美濃市にある風致な町並みが無数の幻想的なあかりに包まれます。今年で30回目を迎える「美濃和紙あかりアート展」は、1300年の歴史を持つ美濃和紙と光源を用いた立体造形作品を公募し、江戸情緒の香る町並みに展示、コンテストを行うイベントです。「日本三大和紙」のひとつに数えられる上質な和紙を透過したやわらかい光には、新しい和紙の魅力とそこに暮らす地域の人々の思いが詰まっています。

和紙の特性を生かした独創的な作品が

闇夜に描く美濃和紙のあかりで彩られた光のエキシビション

名古屋から車で1時間ほど北上した盆地状の地形にある岐阜県美濃市。古くから和紙産業とともに栄えた街であり、厳選された素材を用いて伝統的な手漉きの製法によってつくられる美濃和紙は、美しく丈夫な最高級品として定評のある和紙です。その歴史は古く、奈良の正倉院には702年に美濃和紙でできた戸籍用紙が所蔵されており、1300年以上前に漉かれた和紙が今も残っていることからも、その強靭な耐久性や保存性が実証されています。なかでも厳格に定められた原料と製法によって漉いた本美濃紙は1969年に国の重要無形文化財に指定、2014年にその伝統技術がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、その優雅な風合いと繊細な機能を持つ美濃和紙は、日本のみならず、世界の人びとの心を魅了しています。

「和紙の新しい魅力を発信するためにスタートしたのが”美濃和紙あかりアート展“なんです」。そう話すのは、美濃和紙あかりアート館の館長を務める古川英孝さん。和紙は古くから日本の文化に欠かせないものとして日本人の生活に深く根付いてきたものの、生活様式の変化などを背景に日常では和紙に触れる機会が減少。美濃和紙あかりアート展は、和紙の特長を見直し、その魅力を再発見してほしいという思いからはじまったのです。「美濃和紙の素材感と和紙を通した光の見せ方など、工夫を凝らした新しい表現作品に毎年驚かされています。美濃の古い町並みに溶け込む和紙を通した光の美しい情景とともに、和紙の新しい可能性にも注目してほしいですね」

「美濃和紙あかりアート館」の建物は、昭和16年に美濃和紙産業会館として建てられた近代木造建築物で、国の登録有形文化財に指定されている。1階は、美濃和紙のあかりアート製品を購入できるショップ、2階は歴代入賞作品の展示スペースになっている。

古川さんが館長を務める「美濃和紙あかりアート館」は、美濃和紙あかりアート展の情景を再現したミュージアムです。1994年の第1回から昨年開催された第29回までに入賞した作品が定期的な入れ替えを経て展示されているので、幻想的な雰囲気を1年中堪能することができます。アートの高度な技法が用いられた一般部門の作品はもちろんのこと、自由で豊かな発想から手づくりされた小中学生の作品も見どころのひとつです。

 

「第15回の小中学生部門で大賞を受賞した『にじをたべたひつじ』は、当時、小学4年生の児童がつくった作品です。彼女はすでに大学を卒業して今は小学校教員として働いていますが、先日、彼女が担任をしている児童が来館し、“先生の作品を観に来ました”と報告してくれて。美濃という地域の中で世代を超えて和紙の伝統文化が受け継がれていることがうれしかったし、このイベントが地域社会のつながりを生んでいるのだと改めて実感しました」と古川さん。

 

また、美濃和紙あかりアート展の開催には、子どもから大人までたくさんの人がボランティアとして参加しています。和紙とともに暮らす人たちの思いが詰まっているからこそ、観る者は美濃和紙のあかりにほのかな安らぎを感じるのかもしれません。

第15回の小中学生部門で大賞を受賞した作品「にじをたべたひつじ」。天皇皇后(当時)両陛下が来館された際、色とりどりの和紙を使ったこの作品を絶賛された。

古川 英孝 さん

美濃和紙あかりアート館館長 旧今井家住宅・美濃資料館館長

 

 

 

 

 

美濃和紙あかりアート館

 

岐阜県美濃市本住町1901-3

開館時間

[4月~9月] 9:00~16:30

[10月~3月] 9:00~16:00

※最終入館は閉館の15分前まで。

 

定休日:火曜(祝日の場合はその翌日)年末年始(12月29日~1月3日)・祝日の翌日

入館料:大人(高校生以上)200円

TEL:0575-33-3772