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菅 美里さん

文具ソムリエール

 

大学卒業後、文具好きが高じて大型雑貨店に就職し文具売り場を担当。

現在は、商品開発、売場企画、文具の紹介、コラム執筆、メディア出演などを通して、文具の魅力を伝え続ける。

著書に「毎日が楽しくなる きらめき文房具」(KADOKAWA)、

「文具に恋して。」(洋泉社)、「仕事を効率化するビジネス文具」

(ポプラ社)、近著に「私の好きな 文房具の秘密」(枻出版社)がある。


★菅さんが運営する文具紹介ウェブサイト
STATIONERY RESTAURANT : https://misatokan.jp

 

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文具は、コミュニケーションを引き出すツール。ビジネスマンにこそ、最新の文具を試してほしい。

 

 

物心がついてはじめて手にしたクレヨンと画用紙から、学校の授業や受験勉強に使った学習ノートとシャープペン、オフィスで使用しているボールペンやクリップ、ファイルなど、文具は常に私たちの身近にあるものです。小売店のステーショナリー売り場にはカラフルでおしゃれな文具が並び、品定めに苦労するほど種類が豊富。近年、あらためて文具の魅力にハマる人が増えています。

 

「会社から支給されるものが減り、個人が自前で文具を用意するようになりました。また女性の社会進出が進んだことでお金と時間を自由に使える女性が増え、彼女たちのリアルなニーズに応える商品が多く発売されるようになりました。このような背景が要因となって、文具に興味を持つ方が増えているのだと思います」。

 

そう話すのは、さまざまなメディアで文具の魅力を発信し続ける菅未里さん。その活動は、著書や連載コラムの執筆をはじめ、文具メーカーのコンサルティング、文具の企画・開発・デザインなど多岐にわたっています。「近年では、大手メーカーだけでなく、そこから注文を請け負っていた印刷会社さんを中心に、ものづくりの技術と発想を生かして自社ブランドを立ち上げるケースも増えています。さらにデザインから製造、販売までを一人で行う個人メーカーさんも少なくありません。インターネットによる販売チャネルの拡大が、多様なアイデア商品を生み出す要因になっています」。

 

 

 

ここ数年、頻繁に開催されるようになった文具の販売イベントやSNSによる拡散などによって、従来の文具ファン以外の個人需要が拡大。一方、ペーパーレス化や人口減少などを受け、大手文具メーカー各社は海外市場に目を向けているそうです。

「海外のカンファレンスなどにも出席しますが、日本の高品質な文具は需要が高く、アジアを中心に人気です」。そのクオリティを支えているのは細部にまで神経を注ぐ国民性だけでなく、日本ならではの環境条件が、文具の発展に大きく影響しているそうです。

「海外のあるノート工場を視察した際に空調管理について尋ねると、『窓を開ければ十分』と言っていたのが印象的でした。日本には四季があるので温度や湿度の管理は必須ですし、生産現場の条件は厳しい。だからこそ工夫や改善の文化が根付いたのではないかと思っています。一方、筆記具のインクは、日本の水が軟水なので顔料と混ざりやすいなど条件に恵まれています。そのほか、温暖な気候の国では派手な色使いの文具が多いように、その国々の気候や風土によって異なる特徴が、文具の楽しみ方のひとつです」。

 

 


 

菅さんが愛用する文具

ロイヒトトゥルム ノート
発売:ロイヒトトゥルム1917

連載で紹介する文具ネタや、撮影のプロットをまとめておくのに使っているドイツ製ノートです。表紙は撥水性があるので、お風呂に持ち込んでじっくり考えるのに重宝しています。
 

MD付せん紙(A7)
発売:ミドリ

シンプルさとサイズ感が気に入っています。手帳に書ききれないTo Doリストを書いて中面に貼り、やり終えたことを見えるようにしておくことで、失念しないようにしています。

 

 

 

 

カンポ マルツィオ

SAFFIANOノート

派手なカラーが特徴的なイタリアならではのメモ帳。本に挟むしおりとして使っていて、気になったことを書き込んだら1枚剥がし、そのページに折って挟むようにしています。

 

 

 

GRAPHILO(グラフィーロ)

発売:神戸派計画

万年筆の書き心地を楽しむためだけに使用しているペーパーです。かすれ
や引っ掛かりのない滑らかな書き味が心地よいので、気になる方はぜひ一度お試しください。

 

 

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菅さんは、文具の魅力をより多くの人に知ってもらうために、続々と発売される新商品のプレスリリースを確認。気になるものがあればサンプルを取り寄せ、自ら試したうえで紹介すべき文具を探すことを日課にしています。商品をセレクトする基準について尋ねると、「まずは自分が使っている姿を想像したときに素敵に思えるかどうか。そのうえで実際に使ってみて、作業がよりラクになるかどうかで選定するようにしています。見た目と実用性、その両方が大切なんです」と菅さんは話します。

 


 そんな彼女が文具にのめり込むきっかけとなったのは小学生の頃に経験したある出来事にありました。「当時、身近なものをモチーフにした"おもしろ消しゴム"を集めていたんですけど、それを見たクラスの子が『なにこれ!?』って話しかけてくれて。その当時、内気だった私にとって、文具は友だちとの会話のきっかけをつくってくれる大切なツールだったんです。身近なものだからこそ、文具はコミュニケーションを引き出す存在になり得るもの。その思いは今も変わっていません」。

 


その後、文具好きが高じて、大型雑貨店に就職。念願の文具売り場を担当し、販売現場を経験できたことが菅さんの大きな財産になったそうです。文具に関する深い愛情や幅広い知識だけでなく、販売店のノウハウやフローまで知っている菅さんの存在は、すぐに文具業界で広く知られることとなり、固定観念にとらわれない細やかな感性によって、文具業界に新風を吹き込み続けています。
 日々仕事に追われているビジネスマンにとって文具はツールに過ぎず、こと足りれば良いという方も少なくありません。「日本の文具は、事務用品に近いカテゴリーから発展してきたものなので、見た目よりも実用性が重視されてきた歴史があります。言い換えれば、上の年代の方々が仕事でたくさん文具を使い、改善点を挙げてくれたからこそ、機能性の高い文具が誕生したわけです。だからこそ若い方だけでなく、ビジネス現場の中心で活躍されている方々にも、最新文具についてもっと知ってほしいと思っています。例えば、"のり"ひとつをとっても、液体のりなら塗った場所がシワになりにくいもの、スティックのりならダマにならずキレイに貼れるもの、テープのりなら貼ってはがせるものなど、使う方の不満を解消するために改良され、進化を遂げた文具がたくさん登場しています。まずはいつものボールペンを変えてみるだけでも、仕事が劇的に変わるかもしれませんよ」。

 

 


文具機能やデザインにこだわることで、毎日の仕事がはかどり少し楽しく感じられるかもしれません。

新たな気持ちで仕事に取り組むためにも、この春、お気に入りのアイテムを探してみませんか?